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【開催レポート】津奈木町 柑橘作りの名人に会いにいく!

2022年12月11日(日)と2023年2月19日(日)の2回にわたって、熊本県津奈木町の柑橘農家さんとの体験プログラム「津奈木町 柑橘作りの名人に会いにいく!」を試行しました。

甘夏畑から、旧赤崎小学校を臨む

津奈木町は、熊本県南部にある人口約4500人の町で、農業と漁業が盛んな町です。

かつて町民の多くが水俣病の被害を受けたことから、自然栽培や肥料・農薬を極力減らした農業を行う生産者さんが多くおられます。

勉強会や料理教室、実践塾を開催し、未来の子どもたちへ正しい食と農、環境をつないでいく取り組み「つなぎFARM」や、安全・安心な農作物や加工品を販売する「つなぎ百貨堂」という販売所もあります。

つなぎ百貨堂

津奈木町の農作物の中でも、特産品である柑橘。町の中心から海の方に車を走らせると、山の斜面に甘夏、不知火(デコポン)、スイートスプリングなどの柑橘畑が広がります。

そんな津奈木町の柑橘を収穫する体験をしたい!という声は多いのですが、それぞれの生産者さんがお持ちの農園がそれほど広くなく、本業のお仕事もあるため、体験農園のようにたくさんのお客様を受け入れることができません。

そこで、お客様の数は少なくても、これまでの町の取り組みをしっかりと知っていただき、お客様には来ていただくだけでなく、お互いに意見交換をしたり、その後も新しいつながりが続いていくような体験プログラムを作ろうということになりました。

生産者さんや、津奈木町役場地域おこし協力隊、最近移住して来られた方々など、たくさんの方々と対話を重ね、プログラムを作ってきました。

体験の受け入れ先として、甘夏を中心に生産されている岩崎敏一さん、不知火を中心に生産されている丸田良友さんのお二人にご協力いただくことになりました。

甘夏の生産者、岩崎敏一さん


不知火の生産者、丸田良友さん

まず、事前にお二人にお話を伺いに行きました。畑を見学したり、日々のお仕事など、いろいろなお話を聞かせていただきました。

一番驚いたことは、甘夏や不知火(デコポン)などの柑橘は、収穫してすぐ食べられるのではなく、収穫後に貯蔵庫に入れて数ヶ月寝かせ(追熟)、酸味を減らしてから販売することです。通常は12月〜1月ごろに収穫し、4月〜5月まで大切に貯蔵してから出荷されます。

また、貯蔵中のカビや腐敗を防ぐため、通常は腐れどめの薬品が使われることもお聞きしました。お二人は、薬品をできるだけ使わないために、収穫時期を出来るだけ遅らせ、貯蔵庫に置く時間を短くする=木の上で柑橘を熟させています。

木の上で柑橘を熟させると、それだけ、動物や鳥、霜や寒波などの被害リスクが増えます。甘夏は皮が硬いので、比較的被害を受けにくいのですが(それでも猪やムジナ、鳥に食べられてしまいます)、不知火は皮が繊細なので、ひとつひとつに袋をかけるなど、非常に手間をかけて育てておられることも教わりました。

袋掛けされた丸田さんの不知火

また、甘夏を作られている岩崎さんは、肥料を使わないで柑橘を作ると、木に負担が大きくなるため、1年ごとに花を全部つんで隔年で木に実をならせています。

岩崎さんの甘夏

こういったリサーチから、体験プログラムでは、肥料や農薬を出来るだけ使わないで大切に作られた柑橘が、どれだけの手間をかけて私たちの手元に届いているのかということを、お客様に体感いただきたいと考えました。すでに丸田さんが前年度に地元の方々とチャレンジしたことがあった、12月の袋掛けと2月の収穫の2回に分けた体験を、一般のモニター参加者の方に来ていただいて、試行することになりました。

また、津奈木町が「アートによるまちづくり」を進めていることから、袋掛けをする袋に、自由に絵を描いてもらうことになりました。参加者の方のアイデアで、「どんなみかんに育ってほしいか?」を考えながら、袋にみかんの絵を描いてみました。絵は2ヶ月野外で雨風にさらされるので、絵の具やポスターカラー、油性マジックなど、様々な画材を使い、耐久性を実験することにしました。

12月、袋掛け用の紙袋に、みんなでみかんの絵を描きました。


美味しいみかんになりますように、丁寧に袋掛けをしました。

岩崎さんの甘夏の収穫体験については、12月は畑を見学しながら木のお世話の話などを伺い、2月には収穫体験と甘夏のジュース試飲体験をすることになりました。

12月、岩崎さんの畑では、試験的に栽培されていた青パパイヤを収穫させていただきました!

今年は、昨年より柑橘の収穫量が少なかった上に、1月末には記録的な大寒波に襲われました。霜の被害があっただけでなく、山に食べ物が少なくなったことから、猪や狸、ムジナ、鳥による被害も大きい年になりました。

2月の体験では、動物たちが食べてしまった柑橘の皮や、土に掘った穴、糞なども見学させていただきました。私たちが袋掛けをした不知火のうち、いくつかは動物が食べてしまったり、腐って落ちてしまったものもありましたが、それだけ柑橘栽培が厳しい自然相手のお仕事であることを改めて感じました。

ムジナに食べられてしまった甘夏。「でも鳥や動物もかわいそうやけんね〜」と岩崎さん。

参加者の方からは、「一般的なみかん狩りとは全く異なり、深い体験ができました」「親から受け継いだ柑橘の木があるものの、どうしていいかわからなかったので、体験中にいろいろなお話ができてよかったです」といった感想をいただきました。また、「津奈木町ができるだけ肥料や農薬に頼らない農業を進めている背景を、もう少し詳しく説明する時間を取ってもいいのでは」というご意見もいただきました。

実際に畑を訪れ、生産者さんのお話を聞いて、たくさんのことを学びました。


甘夏は、特別なジューサーで中身だけをシェイクし、フレッシュジュースにしていただきました。ストローはとうもろこしからできた、自然にかえる素材。

津奈木町の柑橘プログラムは、今回の参加者の皆様からのご意見を反映させて、2023年の11月末〜12月ごろに一般の方をお招きして開催することを目標にしています。参加したい!と思われた方は、ぜひお知らせください。募集開始の際に、ご連絡させていただきます。

収穫した不知火は、丸田さんの倉庫へ。3月〜4月まで追熟して、発送していただきます。食べるのが楽しみ!

Photo: Koichiro Fujimoto
Text:桜井(UNAラボラトリーズ)